俺は、昔に親父と一緒に大阪の土木会社で働いている時に、西成に毎日人夫さんを迎えに行く親父についていった事があります。


毎日朝の4時に起きて、西成に人夫さんを迎えに行くのを何年もしていたんよな親父は。


まだ景気も良い時代やったから、早く行かないと良い人夫さんが集まらなかったんよな。


初めてついて行った時の西成の光景は、今でも忘れません。


朝の5時前やのに、沢山の人がいました。


親父が車を降りて人夫さんを探しに行く時に、「車の鍵を全部閉めておけよ。誰かが乗って来ようとしても乗せるなよ。」と言って、どこかに行きました。


まだ若かった俺は、なんの事かも分からずに車で待っていました。


すると次々と俺が乗っている助手席の窓を叩いて、いろんな人が乗せてくれと言ってきました。


正直、ちょっと怖かったです。


しばらくすると、親父が何人かの人を連れて来て、車に乗せて会社に戻りました。


人夫さんの寮をされているおばさんの所に連れて行かれて、親父が、「こいつに朝メシを食べさせてやってくれ。」と頼んでくれて、おばさんがご飯と味噌汁と魚の煮物とお漬物を出してくれて、「いっぱい食べや、おかわりもあるからな。」と言ってくれました。


おばさんは、俺の親父を褒める言葉を俺にいろいろ話してくれました。


西成で見た親父、今おばさんから聞かされている親父は、俺が今まで知らなかった親父でした。


親父は今でも何も言わないですが、あの日に俺を西成に連れて行ってくれたのは、世の中にはこんな世界もあるんやぞと教えてくれたんやと思っています。


また違う日に親父が、「西成の奴らに金を貸してくれと言われても絶対に貸すなよ。腹が減っているから朝メシを買いたいから500円を貸してくれと言われても貸すなよ。」と言われました。


腹が減っていたら力仕事ができひんから、500円貸してやって朝メシを食べさせた方がええんとちゃうんか？と思ったけど、親父が「あいつらはただ飯を食わせたらそのまま消えるし、500円もらっても仕事もしないで帰るから。」と教えてくれました。


朝メシを食べさせてもらったから仕事を頑張ろうや、500円借りたから仕事して返そうみたいには思わない人間の集まりなんよな。


そんな人がいるの？と思われる人がいるかも知れませんが、世の中にはそんな人がなんぼでも居ると俺は親父に子供の頃に教えられました。


大人になり思っているのが、西成に住む人達以外にも、こんな人は山ほど居るし、男性だけでなく女性でも沢山います。


面接の謝礼金目当てや、体験入店の保証金目当ての人を沢山見て来ました。


ちゃんとした人に、ちゃんと謝礼金や保証をしたいと思っているのは間違いないのですが、いくつか条件を付けて払うようにしてるのは、俺の人生経験からなんで分かって頂ければと思います。


YouTuberの人達が、よく西成の事を動画にしていますが、あんなもん表面的な何割かの西成の光景ですよ。


そして俺が書いてる風俗業界の話も、今の俺の立場で書けるほんの少しの真実だけです。


今日も、スカウトを使っている店の人間と出くわした時に、一瞬足が止まり気まづそうにしたけど、そんなに俺に出くわして嫌なら後ろめたい事を止めろよと思いました。


もうお前はリーチがかかっている事に気づけよ。