高校を卒業してすぐ運送会社に就職した。
車やトラックを運転できるし、カラダだけは丈夫だし脳筋で働けると思ったからだ。
先ず新人に課せられるのは社用車、社用トラックの鬼洗車。
並行して長距離担当の人の積み込み手伝いをひたすら。
各地のリンゴ倉庫に張り付き、続々と積みに来るトラックをさばく。
大型トラックだと10キロ段ボール箱又は発泡スチロール箱がマックスで約1000個詰める。
長距離ドライバーと単純に半分こして僕の分で500個は積み込む。
それを朝から晩まで4.5台こなすという感じ。
半年くらい経ちようやくメイン配送を任せられる。
新人の登竜門として、深夜の青森空港前のゲートを減速なしで通過するという儀式があった。
短中距離配送なのでせいぜい2〜4tトラックだがスレスレと言えばスレスレ。
こう見えて度胸とトラック操作はまあまあだったので難なく通過し褒められたのを覚えている。
弘前の積み荷を八戸の市場まで運ぶ仕事があった。
道順や仕事を覚えるまでは先輩とツーマンで僕は助手席。
眠気対策として気分で道順を変えるらしい。
「あれ…この道って…」
「んだ。雪中行軍のとこ」
先輩から、雪中行軍のところの駐車場のトイレで起きたらしい事件の話を初めて聞く。
トイレで悲鳴が聞こえ、かけつけると連れが髪が真っ白になって変わり果てた姿で見つかったという有名な話。
「まじっスかぁ…」
日中の明るい時間帯だったのでその助けもあり怖さはだいぶ軽減され、次第に対向車に目が行くほど冷静さを取り戻していた。
「かと思えば今のトラック野郎、女連れでしたよ!笑」
大型トラックなんかは運転席の後ろに頑張れば人2人並んで寝れるくらいのスペースの寝台があり、長距離をかける時に奥さんや彼女を連れていく人もいるらしい。
「ん?今すれ違ったトラック?」
「はい!女が後ろからバックハグしてったっス!笑」
「今のトラック2t車で寝台ねえタイプのやつだし、そった隙間ねえや」