「……続きを、知りたいって言ってたよね?」
小さな会議室のソファに座らされ、返事もできないまま彼の視線が落ちてくる。
わたしの膝に置かれた手が、じんわりと熱を伝えてくる。
そのまま、ゆっくりと、腿の内側に──。
押し返すような力も、もう残っていなかった。
見つめられながら、その指先が布の上から触れてくる。
重ねるように、探るように、
生地越しでも、どこに何があるかを、彼はもう知っているようだった。
──どうして、あなたがこんなふうに。
そう思いながら、身体の奥では別の反応が芽を出していた。
「……ここ、やっぱり、濡れてるんですね」
耳元に落ちる声。
その瞬間、心まで読まれてしまったようで、わたしは瞳を閉じた。
羞恥と高揚が溶け合う。
投稿で見せてしまった「わたし」の一部。
それを現実に引き出されていくような、この感覚──。
休憩室の扉が閉まる音と同時に、心臓が跳ねた。
そこにいたのは、職場の年下の彼。
無言のまま水を取るふりで、ちらりとこちらを見るその目が、妙に静かで、熱を帯びていた。
──まさか、昨日の投稿…見てる?
そんな不安が、胸の奥でざらりと音を立てた。
「先輩、あれ…」
彼が低く呟いたとき、わたしの背筋が一気に冷える。
けれどその声は、問い詰めるようなものではなく、妙に湿り気を含んでいた。
「……あれって、見たの?」
わたしの声がかすれると、彼は少しだけ笑った。
「コメント、つけたの俺ですよ。気づいてなかったんですか?」
指先が震える。
“見たよ”ボタンを押していた誰かの中に、彼がいたなんて。
あの、濡れて乱れて、見られている妄想に溺れていたわたしを──
まさか、後輩が現実の中で共有していたなんて。
「……もう削除したほうがいいと思いますか?」
なんとか平静を装った声で訊くと、彼は小さく首を振った。
「いえ……むしろ、続きが気になってたんで」
その一言で、足元が崩れそうになった。
羞恥と、快感と、なにか満たされてしまったような背徳感。
静かに、けれど確実に、境界線がゆっくりと溶けていく──。