Faerie's Aire and Death Waltz —史上最も演奏不可能なジョーク楽譜
皆さんこんにちは。マドンナの音楽担当スタッフです。音楽の不思議とユーモアが好きな方へ。今日は、楽譜を見ただけで「これは絶対に演奏できない……!」と笑ってしまう伝説の作品をご紹介します。その名もFaerie's Aire and Death Waltz (from 'A Tribute to Zdenko G. Fibich')。作曲者はアメリカのJohn Stump(ジョン・スタンプ、1944-2006)です。日本語に訳すと『妖精のエアと死のワルツ』となります。
一見すると本格的なクラシック音楽のスコアに見えますが、ページ全体にびっしりと音符が埋め尽くされ、常識を超越した密度。演奏指示も常軌を逸しています。
・Release the penguins(ペンギンを解放せよ)
・Like a Dirigible(飛行船のように)
・Gong duet(ゴングのデュエット)
・Adagio cantabile with a rock tempo feel(ロックテンポの感じでアダージョ・カンタービレ)
・Cro-magnon skinning chant(クロマニョン人の皮剥ぎの詠唱に基づく)など…、
これらは明らかに意図的に演奏不可能に設計されたパロディ作品です。1970年代に作られ、音楽家たちの間でコピーされ、練習室の壁に貼られるうちに都市伝説化しました。
〜作曲者 John Stump について〜
John Stumpは長年、楽譜の写譜・刻譜の仕事をしていたプロフェッショナル。ビートルズの大ファンで、音楽の細部にこだわるオタク気質でした。ユーモアセンスに溢れ、他の作品にも「String Quartet No. 556(b) for Strings In A Minor (Motoring Accident)」のようなウィットに富んだタイトルが見られます。家族の証言によると、彼はこの「Death Waltz」がここまで世界的に有名になるとは想像していなかったそうです。亡くなった後、甥っ子さんがブログで紹介したことで一気に注目を集めました。
〜実際に演奏されている!?〜
「不可能」と言われつつも、挑戦する人々は後を絶ちません。特に有名なのはAurora Music Teachers’ Associationによるグループ演奏。複数人で音符を分担し、なんとか形にした動画がYouTubeに上がっています。観ているだけで笑顔になる、ユーモアあふれるパフォーマンスです。ただし注意点が一つ。YouTubeで検索すると、東方Projectの「U.N. Owen Was Her?」のピアノアレンジがヒットすることがあります。これは昔の誤表示によるミームで、本物のDeath Waltzとは全く別物です。本物はもっと混沌とした、文字通りのカオスです。
〜なぜこの作品が愛されるのか〜
この作品が長く愛される理由は、音楽のルールを完璧に理解した上で全てをぶち壊す痛快なユーモアにあります。完璧主義のクラシック界への優しい風刺であり、演奏者や指揮者への挑戦状でもあります。楽譜自体が一つのビジュアルアート作品として成立している点も魅力。実際に演奏できなくても、「見る」だけで十分に楽しめる稀有な存在です。John Stumpの作品は、私たちに教えてくれます。「音楽は真面目にやりすぎなくてもいい」と。完璧でなくても、楽しくて記憶に残る—そんな音楽があってもいいのです。機会があれば、ぜひ楽譜の画像を探してみてください。一目見た瞬間に「何これ!?」と笑ってしまうはずです。MuseScoreなどで共有されているスコア(閲覧用)もおすすめ。音楽は、時には「演奏されない」ことで輝くこともあるんですね。
さて、今日もお気に入りの音楽聴いて気分を高めたいと思います。気分を高めて仕事頑張ります!
皆さんの音楽ライフが、少しでも愉快でありますように。