春と聞くと、ぽかぽかと暖かくて、軽やかな気分になる季節を思い浮かべる人が多いかもしれません。でも岩手の春は、少し違います。
雪解けが進み、景色は確かに春へと向かっているのに、空気にはまだ冬の名残が残っています。朝晩は特に冷え込み、コートを手放すには少し勇気がいる。日差しは柔らかくなってきたのに、風はどこかひんやりとしていて、思わず肩をすくめてしまうこともあります。
それでも、この「肌寒さ」があるからこそ感じられる春もあるように思います。例えば、少し冷たい空気の中で飲む温かいコーヒーの美味しさ。ストーブの前で過ごす、ゆったりとした時間。厚手の服から少しずつ軽い装いに変えていく、季節の移ろいの実感。
そして何より、まだ完全には咲ききっていない花々が、ゆっくりと春を準備している様子。満開の華やかさとは違う、控えめで静かな美しさがあります。
岩手の春は、一気に訪れるのではなく、少しずつ、確実にやってきます。だからこそ、その変化に気づくたびに、小さな喜びを感じられるのかもしれません。
暖かさだけが春じゃない。少し肌寒いこの季節も、ちゃんと春の一部です。
そんな岩手の春を、今年もゆっくり味わっていきたいと思います。