ドアが閉まる音って、どうしてあんなに静かなのに、胸の奥まで響くんだろう。
コートを脱ぐ仕草ひとつで、空気が少しだけ重くなる。視線が絡んだ瞬間、言葉より先に、温度が伝わった。
「……寒かった?」
そう聞かれただけなのに、返事が遅れる。
近づく気配。香り。わずかに触れそうで、触れない距離。
指先が、逃げ場を探すみたいに、シーツの端をつかむ。
何もしていないのに、もう十分に、心臓はうるさい。
呼吸のリズムが揃っていくのが、はっきり分かる。
「そんな顔、されたら……ずるい」
囁きが、耳元をかすめる。
視線が、首筋をなぞるみたいに落ちてくる。
ただそれだけで、背中にぞくっとした熱が走る。
触れる前の、この一瞬。
一番、想像が暴れる時間。
一番、理性が試される距離。
私は、ゆっくり顔を上げて、あなたを見る。
唇が近づく。
息が、混ざる。
——その先は、今日のお楽しみ、ということで。

