マッサージオイルを手に取った瞬間
空気が少し変わるのを感じる。
まだ触れていないのに香りと体温だけで境界線が曖昧になる。
逃げ道を塞ぐみたいに静かにゆっくり。
オイルは嘘をつかない。
触れた分だけ正直に反応が返ってくるから。
だから私は、 焦らない。
指先で確かめるように一滴ずつ時間をかけて。
滑る感触に思考が追いつかなくなる頃。
言葉はもう必要なくて呼吸と視線だけが会話になる。
力を抜いた瞬間のその無防備さが好き。
委ねた人だけが見せる表情をオイル越しにゆっくり味わう。
今夜は触れられているのか、包まれているのか、分からなくなるまで。

