台風が過ぎ去ってから、
そそくさと雨用スニーカーなるものを注文した。
タイミングが悪いと思われても、台風のなか
配達もままならぬ環境だと知っていながら、
お急ぎで持ってきてほしい......などというのは、
自分が配達員だったら
悲しくなるので言わなかった。
だから次の雨や荒れた天気に備えての運びになった。
届くのが楽しみ。
ななこ
グレーの洋服を着て雨に触れると、生地に雨粒が
くっついて染み込み、
水玉模様のような柄が出来る。
灰色のヒョウ柄をした獣のような気持ちになる。
そんな現象が嫌いではない。
柄のついたジャージを
誰かに見せびらかしたくもなる。
「雨女だの雨男だの、そんなのがいたら干ばつ地帯であらかせぎできるって。そもそも、そんな神がかってないよ人間は」
と冷静に述べる友人は予期せぬ雨を極端に嫌う。
濡れてはいけない服や靴を身に着けているか。
らしい。
ななこ
解体新書の
挿し絵を書いた小田野直武という武士は、
秋田に家を構えていたという。
絵の才能をかわれ、平賀源内の弟子として江戸へ出て助手をつとめた。
源内の獄死後は失意のうちに秋田に戻り、
三十一歳の若さで亡くなった悲運の侍。オランダの絵画を学び、日本画にそれを組みこむという手法で描いた彼の絵が現在も秋田の美術館のおさめられている。
写実的、リアル、臨場感......絵の表現は様々であるが、彼の絵を見た瞬間思い浮かんだ言葉は、
「曇ってるなー」
だった私はおかしいのだろう。
ななこ

