──彼の指が、ゆっくりと私の背中をなぞった瞬間、 世界の音が、すっと遠くなった。
呼吸と呼吸のあいだ、 まるでそこだけ時間の流れが違うみたいに、 指先の温度だけがくっきりと残って、 身体がじんわりと、熱を帯びていく。
「まだ、何もしてないよ」
いたずらっぽく笑ったその声が、耳の奥で溶けた。 してないのに、もう…こんなに反応してしまってるのは、ずるい。 ほんの少しの触れ方、視線の向け方、空気の重ね方で、 こんなにも意識の深いところまで届いてしまうなんて──
ボタンがひとつ外されるたびに、 心の奥にしまっていたスイッチが、少しずつ入りはじめる。
肌の上をすべる吐息。 耳元でささやかれる、何気ない言葉。 そのひとつひとつが、 わたしをわたしでいられなくしていく。
心地よく崩れていく感覚に、 抗う気持ちはどこかへ流されて、 気づけばすべてを預けていた。
ただ、彼のやさしさと熱に包まれて、 声も、震えも、全部、彼にほどかれていく──
* * *
今日はなんだか、甘くとろけるような時間の妄想が止まりません。 お兄様はどんな夜を過ごしていますか?
たまには、ふわっとした夢のなか、迷子になってみるのも悪くないかも…♡ 今夜も、心で触れ合えるひとときがありますように。
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