『しずか 【色白癒し系美乳美女】』の写メ日記☆

Perfect Days(日々是好日あるいは昨日今日不同)

[2024.02.07(水)22:40:14]

こんばんは✨シズカです🎥

文学好きの仲良しさまが

「今年は映画をいっぱい観ようと思う。とりあえず『Perfect Days』が気になる」

と仰ていたので、ワタクシも気になって、観に行ってきました😀🎞

結論・隅々まで素晴らしい映画でした。文学&サブカル好きは絶対観たほうがいいです。

「外国人監督による、日本を舞台に日本人を描いた映画」では、スコセッシの「沈黙」が暫定1位だったのですが、シズカンヌ映画賞 外国人監督作品 最優秀賞は「Perfect Days」で更新します。

仲良しさま、観るきっかけをくれて、ありがとう。本当にありがとう。

私はもう一回、観に行きます。今後の人生で何回も観ることになる映画だと思います。


⚠以下、ネタバレ含む感想です。











🌿朝起きる。布団を畳む。歯磨きをする。ヒゲを整える。

家財道具や持ち物は最小限だけど、仕事の道具はきちんと整え、書物に目を通す時間は大切にする。

主人公・平山の仕事はトイレの清掃員。誰に見られることなくても、褒められることなくても、ただ、ひたすらに、善い仕事をすることにだけ、心を傾ける。

そんなルーティンを繰り返す平山の毎日、最初は「『パターソン』的な映画か?」と思ったのですが、繰り返し見ているうちに「まるで、禅寺の作務を見てるようだ」と感じました。「パターソン」よりも、さらに、主人公の所作が研ぎ澄まされてる。

「『Perfect Days』って、禅の精神の映画じゃないだろうか」と気づくと、主人公の仕事がトイレの清掃員である必然性が見えてきます。

これはシュリハンドク(周利槃特)に準えているんじゃなかろうか。

シュリハンドクは、お釈迦様の弟子・十六羅漢の一人で、レレレのおじさんのモデルになった人物。

お釈迦様の教えを守り、ひたすらに掃除をすることで煩悩を捨て、悟りを開いた高僧です。




🌿風呂なしアパートで洗濯機もない。物質的な無駄を極限まで削ぎ落とした生活。だけど、日々の些末な事柄に安らぎを見出す豊かさを知っている。

これも禅の「山僧活計茶三畝、漁夫生涯竹一竿」を体現しています。

「漁夫が竹竿一本で生涯の糧を得るように、禅僧には茶の木を育てるくらいの小さな畑さえあればいいのです」と言う意味です。

平山が、テーブル一卓分のスペースで植木を育てているのも、この暗喩ではないかしら。

清貧を絵に描いたような平山の日々。完璧である、とは全てを持っていることではなく、自分に本当に必要なものを知り、あるもので足るを知ること。




🌿「田中泯みたいなホームレスおる……」と思ったらホントに田中泯なの贅沢すぎる。


🌿それを言ったら、常連客(あがた森魚)のギターでママ(石川さゆり)が歌ってくれるバーも贅沢すぎる。通いたい。


🌿「本棚を見ると、その人の、人となりがわかる」と言います。

平山は無口だけど、読んでいる本、聴いている音楽で、彼の人となりが推測できます。

私は、平山の本棚にはリチャード・ブローティガンもあると見た。

平山と言う人物はおそらく、商業主義・物質主義・拝金主義の世の中には馴染めずに、社会からほんの少し、距離を置いて、流行りやツールの進化にも乗らず、自分が本当に好きなものとだけ暮らす、半・世捨て人みたいな生き方を選んだ。

平山を頼りに家出してきた姪を、母親(平山の姉)が迎えに来るシーン。乗っているのが運転手つきの高級車、「父さんももういろいろわからなくなっちゃったから、会いにきてあげてよ」と言う台詞から、平山の生家は資産家で、父親との確執があったことが伺えます。

平山に感じていた謎の既視感、親近感。

「あ、この人、太宰に似てるんや」と腑に落ちました。

太宰治はゴータマ・シッダールタさながら、生家が裕福であったがゆえに、物質的な豊かさの虚しさを知り、そこに耽溺するだけの生き方に嫌気がさし、自己嫌悪に陥り、作家になった人です。それを表現したのが「人間失格」で、「じゃあ、真の豊かさって何よ、貴い精神って何よ?」を掘り下げたのが「斜陽」です。

「人間失格」の葉蔵は、厭世をこじらせ、酒と女とカルモチンに溺れ、廃人になりますが、平山には、文学があり音楽があり、意図してかせずか禅マインドがあった。

平山は、闇落ちしなかった葉蔵なのかもしれません。



🌿劇中で平山と姪のニコが口ずさむ「こんどはこんど、今は今」も、禅語で言ったら而今(にこん)やん。

劇中でヴェルヴェット・アンダーグラウンドや
ルー・リードの曲が流れるので、ニコの名前って「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコから来てるのか」とばかり思っていたのですが、ダブル・ミーニングかもしれませんね。



🌿禅理解のキーワードの一つが「無駄を削ぎ落とす」だと思います。

小料理屋のママに会いに来た元夫が

「癌が転移して、自分はもう長くない」

「最後に謝りたい、いやお礼が言いたい、いや、ただ、もう一度、会いたかったんです」

と吐露するシーン。

良い時期もあり、傷つけた時期もあり、残った感情が「ただ、もう一度会いたかった」。

これも、自分に残された時間が僅かだと知ったとき、見栄や意地や確執と言う感情が削ぎ落とされたからこそ、至った境地なのだと思います。


🌿パンフレットに柴田元幸さん(一番大好きな翻訳家です)が寄稿してくれてるのも、涙チビっちゃったくらい嬉しい😭!!

柴田先生は、スチュアート・ダイベックにインタビューした際に

「日本語には『なつかしい』と言う美しい言葉がある。あれは英語では一言で表現できない」
「プルーストが『なつかしい』と言う言葉を知っていたら、マドレーヌを食べて終わりだったかもしれない」 

と言われた、と述懐しています。「失われた時を求めて」が本当に失われていた世界線、それはそれで恐ろしいですが。

劇中に「木漏れ日、と言う言葉は日本語特有の表現。木漏れ日は、光と影の加減により、同じものになることはない」と言う解説が入ります。

HENTAIやKOUBANのように、KOMOREBIも日本語のまま世界共通語になったら、美しいと思う。

日本語にしかない表現を美しい言葉として、発見してくれてありがとう、日本語の美しさに気づいてくれてありがとう、ヴィム・ヴェンダース。



🌿映画のタイトルは「Perfect Days」ですが、パンフレットの表紙には「Perfect Day」の文字がひたすら羅列されている。タイプライターで打ったみたいに、どれも全て、一部が掠れたり欠けたりした形で。

変わり映えしない毎日でも、同じ日々の焼き増しではない。同じように見えても、一日一日、異なる日々の積み重ねである。複数形じゃないんだ、あくまでも単数形として、一個の日として独立した一日が積み上がっていくんだ、と言わんばかりに。

禅語で言ったら「昨日今日不同」ですね。



🌿古書を購入する度に、会計時に一言書評つけてくれる古本屋の女主人、好きだ。

幸田文については

「もっと評価されるべきなのよ。同じ言葉を使ってるのに、なんでこうも違うかね」

と評しています。

同じ言葉を使っていても、伝わってくるものが違う。

この映画には「同じに見えても、違う」と言うキーワードが繰り返し登場します。

これも禅語の「銀碗盛雪、明月蔵鷺」に通ずる見方だと思います。



🌿「職業に貴賤上下の別はなし。ただし、全ての職業にプロとアマチュアがいる」と言う言葉があります。

平山の仕事ぶりにぴったりな言葉です。表面的には同じ行動をしているように見えても、心持ちや心がけで、その意味は変わる。



🌿ラストシーンで、吹き出したいのか、泣き出したいのかわからない平山の表情に合わせて流れる音楽が「Feeling good」って、カッコ良すぎんか。

夜が明けて、新しい一日が始まる、私は私の人生を生きる。最高の気分だ。



ワタクシの10代の頃の夢は「メタルやプログレのアルバムに変な邦題つける仕事」だったのですが、「Perfect Days」に邦題をつけるとしたら、禅語の「日々是好日」がしっくりくると思う。

晴れの日も雨の日も、全てが好い日。楽しい日も悲しい日も、全てが人生にとって必要な日。嬉しくて泣きたい日も、悲しくて泣きたい日も同じくらい大切な日。だから全ての一日一日がパーフェクトなんだよ。って意味で。




「ただの完璧な日

公園でサングリアを飲んで
日が暮れたら俺達は家に帰る

ただの完璧な日

動物園の動物に餌をやって
映画館で映画を見たら俺達は家に帰る

ああ、なんて完璧な一日なんだろう」
(ルー・リード「Perfect Day」)



(ワタクシは特定の宗教は信仰していません。手塚治虫先生の「ブッダ」が大好きなだけです。推し十大弟子はアナンダ)



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